eatocoなおこです。 おやこ食堂全5回が終わって、ほっとしつつ、ずっと読みたかった本を読んでいます。
2008年に書かれた『子どもが育つ条件』(柏木恵子)。 まだ最初を読んだだけなのですが、ちょっと泣きそうになった箇所があります。
10年ほどの前の自分を思って、
そして、
いままさにその真っただ中にいるお母さんの心中を察してーーー。 イイトコが支えたいお母さんの気持ちって、きっとこんなだなーーーーーって思った箇所です。
ちょっと長いです。
なので、興味があれば、読んでみてください。 ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼ 「自分の時間が欲しいのに、忙しくてとれないという母親の願いは、単にがまんを要請したからといっても解消しません。そのことは、出産・育児が人間にとってどういうものかを原理的に考えてみると明らかです。 ほ乳類である人間の繁殖は、妊娠ー出産ー子育てという一連の営みです。この営みは、親のもっている資源を子に投資することです。胎児の栄養補給も排泄処理も自動的に行なわれます。(中略)出産後も母からの栄養摂取は続き、排泄の始末をはじめ身体の安全と健康は親の世話に完全に依存しています。世話をする母親は、このために時間も心身のエネルギーも使います。 このように妊娠から育児という一連の行為は、母親の時間、心身のエネルギーなど自己資源の投資や消費にほかなりません。 ところで妊娠・出産以前は、母親はこの資源をほとんど自分のために使っています。それが妊娠・出産後は子どものために大量に消費され、また投資しなければならないことになり、自分のために投資する余地がほとんどなくなってしまいます。その資源は、時間であれ、経済であれ、心身のエネルギーであれ、すべて有限です。この限りある資源が子どもと育児だけに大量にとられてしまいます。特に一人で子育てしていれば、もっぱら自分の資源を使うことになります。このことは当の母親にとっては大変なことです。 人間に限らず生物体は、2つの重要な課題をもっています。一つは個体自身の生存と発達ーー自分の心身が安全・快適に保持され成長していることです。もう一つは、種の保存ーー子孫を残すこと、つまり妊娠・出産・育児です。(中略)すると、これら有限の資源をどう2つの課題に投資するかが問題になります。 どちらも必要なのに資源が有限であるために、その配分をめぐる葛藤が生じやすくなります。(中略)一方の育児だけに自分の資源が投資されてしまい、自分に配分できないと自己成長が不全となります。そうなると、自分と、子ども・育児との間に葛藤が生じます。 (中略)このように、人間が有限の資源投資をめぐって葛藤する宿命をもっていることを考えますと、育児だけに専念している母親たちが「自分」にこだわり「自分の時間を」と願うことを、わがままだと切り捨ててしまうことはできないでしょう。子育てしている母親には、自分自身が成長・発達するための時間や空間、活動などを保証することが必要です。これは日本の社会の課題であり、のちに述べる子育て支援の重要なターゲットです」 ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼ この文章が出てくる少し前に書かれているのが、育児中の母親を対象にして行なわれた調査。 「いま一番困っていることは?」という問いに対するトップの答えが
「子どもがなかなか寝てくれない」という結果で、
それは睡眠不足が子どもの成長に悪いと心配してのことではなくて、 「子どもが眠っているその間に、子どもにわずらわされずに
母親が自分のために時間を使いたい」 と願ってのことだという話。
ここに、10年前にまったく同じことを感じながら、寝付きの悪いわが子を
たった一人で寝かしつけていた自分の姿が重なって、思わず涙してしまったのです(T T)。 あのとき自分が感じていたことって、こういうことだったのだなーーー
と、改めて答えを提示された気分。
世のお母さんは、みんな、自分の限りある資源を、
妊娠・出産・育児にこうやって費やしている、あるいは費やしてきたんですね。
それを思うと、なんてすごいんだと思います。尊敬します。
(ただ育児は何も「お母さん」に限ったことではなく、
お父さんでもそれ以外の人でも、すべての養育者に当てはまることだということは言わずもがな)
そんなお母さんたちが、母でもなく妻でもなく嫁でもなく、
一人の人間として成長していくお手伝いができたらな。 イイトコの子育て支援、お母さん支援の根っこって、こういうことかなぁと思うのです。