ブランディングするぞ!に行き着くまで
新型コロナウィルスの影響を受けて予定通りの改装工事が進まず、イイトコはいったん休業中です。
再開は延びてしまったけれど、それでもイイトコは止まっていないことをお伝えしたいと思ったので、開業プロジェクトについて、今進めている事などをブログに記すことにしました。
これから作ろうとしているカフェについて一人でも多くの人に知ってもらいたいし、これからカフェや喫茶店を開業しようとしている人にとって、ほんの少しでも参考になれればいいな、との思いを込めて綴ります。
* * *
まずは、「ブランディング」です。
いきなり「ブランディング」ですが、これには訳があります。
今回は、私が「そういえば大事じゃん、ブランディング!」となった経緯についてご紹介していきましょう。
マグひとつも決められない
新型コロナの影響で「工事ができない」「今できることをやろう」となったとき、まず考えたのは「食器選び」と「会計システムづくり」。
......ということで、「とっかかりやすそうだから」という理由で、「食器選び」のコーヒーマグから手をつけることにしました。
現在、自宅で使っているイッタラのティーマのマグカップが大きさもシルエットもいいなと思ったので、カフェでも同じようなサイズ感や形の物を探してみることに。
そこで、業務用の食器類を扱っているサイトを見つけ、一番イメージに近い物を取り寄せてみました。
左が蚤の市でみつけてお気に入りのマグ(イッタラの前身、アラビアの「Green Office」というシリーズのようですが詳細不明)、右が今回取り寄せたサンプル。
イッタラ(と呼びます)のマグとほぼ形は同じ。
だけど肉厚な分、ちょっとだけ重い。
家人に感想を求めると、「イイトコはもっとカラフルでもいいんじゃない?」という返事が返ってきました。
そして、イイトコに対するお互いのイメージのギャップに、このとき初めて気がついたのです......。
私は、「イイトコは内装に古い木を多用するから、食器はプレーンな白でしょ」といつの頃からか思い込んでいました。
ところが家人は、「いやいやカラフルでしょ」と言う。
このギャップは何だ?
イイトコらしさって何だ?
完全に迷子になるのです。そう、イイトコブレンドを探す旅でもしばしば迷子になったように......。
はい、もうお分かりですね。
「これはきちんとブランディングせねば!」
ってことに行き着いたのです。
ブランディングが大切なワケ
ブランディングは本来、お店の内装、デザイン、料理、食器、広告、販促物、ウェブサイト、SNS......すべてに先立ち、その指針となるものなので、今頃気づくようではかなり遅いとも言えます。
これから自分のお店を持とうとされている人は、私のような間違いは犯さないでくださいね。
ただこんな私でも、ブランディングの重要性を丸っきり考えていなかった訳でもないんですよ。
これまでも、決めてきてはいたのですーーー直感や勘、好きか嫌いか、といった判断基準で。
ただそれでは、今回のマグ選びのように、人によってブレが生じてしまうことがわかりました。
直感・勘・好き嫌いはすべて、個人の嗜好に依るものだからです。
個人に依るものではなく、誰から見ても、どんなお客様から見ても、そこで働く人から見ても、ブレない世界観、それがブランド。
ブランディングの目的は、内装、デザイン、料理、食器、広告、販促物、ウェブサイト、SNS......お客様とのあらゆる接点(=タッチポイント)において、お店や会社の世界観を魅力的に伝え、お客様にファンになってもらうこと。
ここ、大事。
大事なのに、私はついこの前まで「改装工事を進めながら詰めていってもいいかな〜」くらい呑気に構えていました。
そもそも考えてみたら、イイトコのロゴも決まっていないし、それなのにお店の改装にズンズンと進もうとしていたわけです。
考えると恐ろしい。
くれぐれも、皆さんはこんな過ちを犯さないでくださいね。
ブランディングの参考図書
さて、そういうわけで、ようやくここからイイトコのブランディング作業が始まるわけですが、その経緯は「ブランディングについて考えた②」以降でご紹介するとして、今回は最後に、イイトコのブランディングを考える上で私が参考にした書籍についてご紹介しておきます。
「アップルのデザイン ジョブスは”究極”をどう生み出したのか」
(日経デザイン編/日経BP社, 2012) アップルのスティーブ・ジョブスが亡くなって割とすぐ後に出た本です。
アップルは「ブランディング」と聞いて真っ先に浮かぶ会社のひとつ。
社会人になって初めて入った会社がマックで仕事をしている会社だったので、自然とアップル製品が好きになり、ジョブスの仕事も尊敬の念をもって見ていました。
ジョブスは、使う人に愛される魅力的なプロダクトやサービスを作るのに長けた人で、すべてのタッチポイントに顧客があっと驚くような「アップルらしさ」を施すのが上手な人でした。
イイトコも、内装やデザイン、出される料理まですべてのタッチポイントにおいて「イイトコらしさ」を感じさせるブランディングが必要だと感じさせてくれた本です。
(小山田育・渡邊デルーカ瞳著/クロスメディア・パブリッシング, 2019)
今回のイイトコのブランディングは、この本に書かれている手順に沿って進めました。
なぜブランディングが必要なのか? ブランドはどうやったら作れるのか?
理解することは簡単でも、いざ実際に自分がブランドを作るとなると大変な作業でした。
本とにらめっこしてウンウン悩みました。
(グラフィック社, 2016)
海外の事例が豊富に紹介されています。
ブランディングが実際の店づくりや販促物にどう生かされているのか、やはり文章だけでなく実際に目で見て確認できるのがビジュアル本のいいところ。
かけられている予算が桁違いそうだけど、世界観を作り込むという点では参考になりました。
(パイ インターナショナル, 2017)
こちらは掲載されている事例がどれも国内の、それもリノベーション物件。
これなら手が届きそう!
インテリア、制作物の世界観が統一されている店舗ばかりで、とても参考になります。
さすがパイインターナショナル(ピエブックスと経営統合したのね<余談>)。
同社の本には他にも見てみたい本(読むというより見る)がたくさんあります。
(パイ・インターナショナル, 2018)
上と同じ出版社の別の本。
amazonを漁っていて見つけました。
事例はすべて海外になりますが、写真が豊富で大きくて、カフェのカウンターやショップの内装、サイン類やカトラリーなどブランドの統一された世界観を実際に見て学べるのが魅力。
嬉しいのは、食器などこちらが知りたい細部もちゃんと取り上げられていること。
「カフェの空間学」(加藤匡毅著・学芸出版社, 2019)
こちらもamazonで見つけました。
建築家が国内外の気に入ったカフェを採寸して、その寛ぎや魅力の秘密に迫っている本。
取り上げられているのが、コンクリの土間や、古材がふんだんに使われている「ざっくりした」感じなカフェが多いのが、好みに近い感じ。
実際にお店をつくるときの、席の配置やサイズ感がつかめそう。
イイトコのDNAが定まったあと、お店の細部までブランディングを行き渡らせるときの参考になりそうです。
「物を売るバカ」「物を売るバカ2」(川上徹也・KADOKAWA)
モノが溢れる時代になって、どれを選んでも同じなら安い方で、となりがちな現代。
もはや「モノ」ではない、「体験」を売って差別化する時代だよ、ということが書かれています。
今回、イイトコのブランドDNAを掘り下げるにあたって、どうしても「感情的機能」や「イイトコでできる体験」にピンと来ないことがありました。
私自身、体験で差別化する現代の思考法にシフトできていなかったというか......。
そんなとき、「体験を売るって、こういうことか!」と気づかせてくれる事例がいっぱい。
お客様は「体験」したがっている。
リアルな店舗だからこそできること、に常に意識的でありたいですね......。
* * *
というわけで、ここまでお付き合いくださったみなさま、ありがとうございました。 次回は、では私がこれらの本を使って、実際にどうやってイイトコのブランディングをしていったか......!?をご紹介できればと思っています。
ブランディングについて考えた②につづきます。 よろしければまたお会いしましょう。
ではでは、有意義なおうち時間を!
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